屋形島へは、大分県佐伯市の蒲江港から定期船「えばあぐりいん」で10分。対岸にある蒲江の街並みが見えるほど近いのに、一歩島に足を踏み入れれば、車も店もない非日常が待っています。とはいえ、島民のほとんどは漁師。自分の船で蒲江に渡れば、スーパーも病院も学校もあるので、生活に大きな不便はありません。ここでは船が軽自動車みたいなものなんです。島民が暮らすのは港のある島の北側で、後藤緋扇貝の作業場もここにあります。日向灘に面した南側は、海面から崖がそそり立ち、龍王山の頂を望みます。島には、古くから龍にまつわる神話があり、龍王山はその象徴のような存在。その龍王山に抱かれるように、山麓と北側海岸線との間にぽっかりと広がる平地に、島唯一の集落が広がっています。かつて、島の漁業が盛んだった昭和の半ば頃には150名を超える島民が暮らし、学校もありました。集落には、当時の名残の作業小屋や畑の跡などが今でも残っています。現在、島の人口は13人。そのほとんどが高齢者ですが、島の高齢者はとても元気です。まるで、島の持つエネルギーをもらっているかのようです。観光名所はありませんが、空と海と緑に包まれる島暮らしと緋扇貝を堪能できる島、それが屋形島です。