後藤緋扇貝を始めたのは、後藤家の“じぃじ”、後藤文明さん。元々、モジャコ漁と呼ぶブリの稚魚を獲る漁師で、地元の漁師仲間で知らない人はいないというほど、腕のいい漁師です。“ばぁば”の裕子さんとふたりで始めた緋扇貝の養殖は、その美味しさと目を惹く鮮やかな貝殻で、やがて「屋形島特産の緋扇貝」として知られるようになりました。現在は、そろそろ文明さんから長男の猛さん・次男の拓也さんに引き継げるように、新しいやり方も色々と模索しながら家族総出で育てています。実は、猛さんも拓也さんも、一度は出た屋形島に戻って来たUターン組。島を出たからこそ島の良さが見えたのかもしれません。20代の頃にはインドやネパールなどを放浪した猛さんは、2度目のインド旅で、それまで当たり前だと思っていた屋形島の価値に気づいた、といいます。その後、屋形島で自分にできることを考えた末、島に戻り両親の仕事を手伝うようになりました。2018年4月には、旅の経験から着想を得て、空き家を改装した屋形島ゲストハウスもオープン。珍しい離島のゲストハウスとして知られつつあります。「観光地ではないけれど、この島を訪れる人と島に暮らす人とが交じり合って、新しい何かが生まれていくような、そんな場所になればいいと思っています」。